熱応力計算機
温度変化による拘束材の熱応力とひずみを計算します。
材料特性と温度変化を入力して、熱応力、ひずみ、熱膨張を計算します。一次元拘束と二軸拘束モデルに対応しています。
熱応力計算機
温度変化による拘束材の熱応力とひずみを計算します。
熱応力計算機について
熱応力とは、材料が温度変化を受けたときに自由に膨張・収縮できないことで生じる機械的応力です。拘束がなければ、材料は応力を生じずに熱ひずみ ε = α × ΔT だけを示します。周囲構造、剛固定、接着層間の膨張差などによって拘束されると、阻害された熱膨張が内部応力を生み、降伏、割れ、疲労破壊の原因になります。
完全拘束部材の一軸熱応力は σ = E × α × ΔT で表されます。ここで E はヤング率(Pa)、α は線膨張係数(1/°C)、ΔT は温度変化です。この式は、拘束が軸方向ひずみをすべて防ぐことを前提としています。たとえば、長さ1 mの鋼棒(E = 200 GPa、α = 12 × 10⁻⁶/°C)を100°C加熱すると、σ = 200 × 10⁹ × 12 × 10⁻⁶ × 100 = 240 MPa となり、軟鋼の降伏強さ(250 MPa)に近づきます。配管、橋梁、鉄道レールで自由な熱膨張を考慮することが重要なのはこのためです。
二方向に拘束された板やシェル構造(平面応力または二軸状態)では、熱応力は σ = E × α × ΔT / (1 − ν) になります。ν はポアソン比です。(1 − ν) が分母に入ることで、横方向の膨張も妨げられるため、応力は一軸の場合より大きくなります。ν = 0.3 の鋼では係数が 1/0.7 ≈ 1.43 となり、同じ温度変化でも二軸熱応力は一軸値より43%高くなります。
熱応力解析は航空宇宙工学で特に重要です。部品は極端な温度サイクルにさらされるからです。ジェットエンジンのタービンブレードは1400°Cを超える燃焼温度にさらされつつ、内部は800〜900°Cまで冷却されるため、厚さ方向の急峻な温度勾配と高い繰返し熱応力が発生します。イットリア安定化ジルコニアの遮熱コーティング(α ≈ 10 × 10⁻⁶/°C)は、金属基材(α ≈ 12–16 × 10⁻⁶/°C)にできるだけ近づけて、コーティング剥離応力を低減します。
土木工学では、熱応力は完全に排除するのではなく、設計で制御します。コンクリート舗装には一定間隔でカット目地を設け、目地間の熱応力をコンクリートの引張強度以下に抑えます。鋼橋では伸縮継手にローラーベアリングや滑り板を用いて自由な熱移動を許容します。一方、連続橋台橋では、橋面が支持杭に熱応力を負担させるよう意図し、鋼H形杭の延性によって橋の寿命全体にわたる反復熱サイクルに対応します。
熱応力の例
一般的な拘束材問題における熱応力とひずみを示す工学例です。
| 材料 / 温度変化 / 特性 | 応力 / ひずみ | 工学的背景 |
|---|---|---|
| 鋼梁: T₁=20°C, T₂=150°C | α=12×10⁻⁶/°C, E=200 GPa, ν=0.3 | ε = 1.56×10⁻³ | σ_uniaxial = 312 MPa | σ_biaxial = 445.7 MPa | 完全拘束された鋼を130°C加熱。一軸応力は軟鋼の降伏強さを超える。 |
| アルミ板の冷却: T₁=200°C, T₂=0°C | α=23×10⁻⁶/°C, E=70 GPa, ν=0.33 | ε = −4.6×10⁻³ | σ_uniaxial = −322 MPa | σ_biaxial = −480.6 MPa | 拘束されたアルミの冷却による引張応力。負の値は引張を示す。 |
| 銅線の加熱: T₁=25°C, T₂=80°C | α=17×10⁻⁶/°C, E=110 GPa, ν=0.34 | ε = 9.35×10⁻⁴ | σ_uniaxial = 102.85 MPa | 拘束下で加熱される銅導体。中程度の圧縮応力。 |
| ガラスの熱衝撃: T₁=20°C, T₂=300°C | α=9×10⁻⁶/°C, E=70 GPa, ν=0.23 | ε = 2.52×10⁻³ | σ_uniaxial = 176.4 MPa | σ_biaxial = 229.1 MPa | ガラスは破壊靭性が低く、二軸応力が160 MPa以上だと通常は破損する。 |
熱応力計算機の使い方
- 初期温度と最終温度を°Cで入力します。計算機は ΔT = T_final − T_initial を求めます。正の ΔT は加熱(拘束材では圧縮応力)、負の ΔT は冷却(引張応力)を意味します。
- 熱膨張係数を 1/°C で入力します。代表値: 鋼 = 12×10⁻⁶、アルミ = 23×10⁻⁶、銅 = 17×10⁻⁶、ガラス = 9×10⁻⁶、コンクリート = 12×10⁻⁶。
- ヤング率を GPa で入力します。代表値: 鋼 = 200、アルミ = 70、銅 = 110、ガラス = 70、コンクリート = 30〜40。
- ポアソン比を入力します(無次元、通常 0.25〜0.35)。代表値: 鋼 = 0.30、アルミ = 0.33、銅 = 0.34、ガラス = 0.23。
- 計算をクリックすると、熱ひずみ、一軸応力(片方向拘束の棒や梁)、二軸応力(2方向拘束の板)の結果が表示されます。負の応力値は引張を示します。
熱応力 FAQ
材料に熱応力が生じる原因は何ですか?
材料が温度変化を受けても自由に膨張・収縮できないと熱応力が発生します。拘束は外部(剛支持、ボルト締結)でも内部(複合材の層ごとの膨張差)でも起こり得ます。拘束がなければ材料は応力なしで寸法だけが変化します。拘束がその寸法変化を妨げ、剛性(E)と阻害ひずみ(αΔT)の積に等しい弾性応力を発生させます。
一軸熱応力と二軸熱応力の違いは何ですか?
一軸熱応力(σ = EαΔT)は、両端固定の棒や梁のように1方向だけ拘束される部材に適用されます。二軸熱応力(σ = EαΔT / (1 − ν))は、板やシェルが平面内の2方向で同時に拘束される場合に適用されます。横方向の(ポアソン)収縮も妨げられるため、二軸の場合の応力は高くなります。多くの薄肉構造や電子部品は二軸問題として扱う方が適切です。
熱応力が破損を引き起こすかどうかはどう判断しますか?
計算した熱応力を、延性金属なら降伏強さ、ガラスやセラミックスのような脆性材料なら破壊強さと比較します。鋼(降伏強さ約250 MPa)では、130°C加熱による312 MPaの一軸応力は降伏を超え、永久変形を生じます。繰返し熱荷重では疲労強度も確認してください。構造用途では安全率1.5〜3が一般的です。複合応力状態では von Mises 基準を用います。
熱応力破損を起こしやすい材料は何ですか?
脆性材料(ガラス、セラミックス、コンクリート)が最も脆弱です。塑性変形で応力を逃がせないため、破壊強さを超えると突然破断します。ヤング率が高く熱膨張係数も高い材料は熱応力が生じやすい傾向があります。ダイヤモンド(E = 1,000 GPa、α = 1×10⁻⁶/°C)は剛性は高いですが膨張は小さく、ポリマーフィルム(E = 1–3 GPa、α = 50–200×10⁻⁶/°C)は膨張は大きいものの剛性が低いため、応力は中程度になります。
工学設計で熱応力を減らすにはどうすればよいですか?
代表的な対策は次のとおりです。(1) 伸縮継手やスライド支持を用いて自由な熱移動を許容する。(2) 接合部材には膨張係数が適合する材料を選ぶ。(3) 剛性が高く α が異なる部材の間に、低弾性率の中間層(順応性のあるはんだやポリマー接着剤など)を入れる。(4) ΔT が急激に変わらないよう、緩やかな昇温・降温手順を設計する。(5) 遮熱コーティングや断熱材で、構造部材が受ける温度差を小さくする。伸縮継手、材料マッチング、制御された加熱速度を組み合わせると、発電所配管や航空宇宙構造のような厳しい用途で最も効果的に熱応力破損を防げます。
ポアソン比は熱応力にどう関係しますか?
ポアソン比(ν)は、軸方向ひずみに伴う横方向収縮を表します: ν = −ε_lateral / ε_axial。二軸熱応力では、拘束が2つの面内方向のひずみを同時に妨げます。ポアソン効果により、X方向のひずみを止めるとY方向にも応力が生じ、その逆も同様です。このため、2つの応力成分が結び付けられます。結果として得られる二軸熱応力は E × α × ΔT / (1 − ν) で、常に一軸値より大きくなります。一般的な金属(ν ≈ 0.3)では、二軸応力は一軸応力より約43%高くなります。